「学校に行きたくない」と感じている子供に無理をさせたくはないけれど、学校との距離があまりに開いてしまうのも心配…。
そういう時に利用して欲しいのが保健室登校や別室登校です。
こちらの記事では、保健室登校や別室登校のメリットやデメリット、どういった時に利用すれば良いのかについて詳しく紹介していきます。
目次
保健室登校・別室登校とは
「全国の中学生の10%にあたる33万人に不登校の傾向がある」というデータもあり、今現在は普通に学校に通っている子供でも、いつ何のきっかけで不登校になってしまうか分かりません。
親としては子供が元気に学校に行ってくれるのが一番安心出来ますが、ある日突然「学校に行きたくない」と言い出すことも少なくないのです。
学校に行くのがつらい、学校に行きたくても同級生に対して恐怖心がある。
そんな状態で無理をして学校に行っていると、しだいに心身の不調を訴えるようになることも。
また、学校に行きたくない原因を取り除かないまま無理をさせたことが、子供の心に大きな傷を作ることになる可能性もあります。
何らかの原因で学校に行きたくない。教室に入りたくない。けれど、不登校になることを望んでいるわけでは無い。
そういう子供たちの受け皿にもなるのが、保健室登校、別室登校といえます。
別室登校が向いている子供
まず「別室登校」ですが、「自分の教室には行かず、登校してから帰るまで同級生とは別室で過ごす」ことを指します。
また、「一部の行事や授業には出席するけれど、ほとんどの時間は教室とは別の別室にいる」ことも別室登校です。
進路相談室や図書室、カウンセリングルームや別室登校専用の部屋などが使われます。場合によっては特別支援学級で受け入れるケースもあります。
いじめや何らかのトラブルによってクラスメイトの中に入りにくくなった児童生徒だと、学校には登校出来ても教室に入ることがかなりツライという場合がとても多いです。
教室に入ることに恐怖心や強い不安感が一旦芽生えると、そこを改善するというのは簡単なことではありません。
そうした時に教室以外に居場所が確保され、クラスメイトとは接すること無く学校生活が送れる別室登校は本人にとってはメリットが大きいのです。
教室に入りにくくなっている児童生徒に別室登校をさせている公立小中学校は年々増加しています。
以前までだと教室に入れないなら不登校しか選択肢がありませんでしたが、今では「教室に入ることにこだわらず、個人個人に合わせた登校の在り方を選んで良い」という風潮になりつつあることはとても良い流れではないでしょうか。
保健室登校が向いている子供
「保健室登校」も別室登校の一つですが、教室に入りにくくなっている児童生徒の中でも体調面や精神面に不安の大きい子供が利用することが多いです。
養護教諭、いわゆる「保健の先生」が対応出来るため、身体と心のケアがしやすいというメリットがあります。
「担任には言いにくいことでも保健の先生になら相談しやすい」という児童生徒もいますよね。
1日のうちに数時間を保健室で過ごすという子供もいれば、休み時間やランチタイムに保健室に必ず来るという子供もいます。
ただ、保健室には常に養護教諭がいられるわけではありませんし、ケガや体調不良の子供へのケアが必要となるため、別室登校のように登校から下校まで保健室にずっと居続けることは難しい面があります。
最近では保健室登校が数日間続くようであれば別室登校に移行させる学校がほとんどです。
「教室に入りたくない、入れない」
保健室登校、別室登校は、「学校に行きたい」という意欲はあるものの、さまざまな事情で教室に入りにくかったりクラスメイトと会うのがつらい子供にとってはメリットが大きいシステムです。
一時的に不登校であった子供が再登校の第一段階として別室登校をしたり、また、普通に登校している子供が「もう無理…教室に入りたくない」となった時に不登校とならないように別室登校でワンクッションを置くという考え方もあります。
別室には教職員が付き添ってくれる?
保健室登校の場合は、養護教諭が一緒にいてくれます。不安を抱えている心のケアが出来るので、家で1人の時間を過ごすよりは子供も安心感があるでしょう。
ただ、養護教諭は常に保健室にいられるわけではありませんし、子供だけで保健室にいさせることも出来ないため、学校によっては保健室登校が難しいケースもあります。
別室登校の場合は担任や学年主任、教科担当、教頭など、手の空いている教職員が交代で対応してくれることになります。
ただ、教職員の手が回らない時は1人で過ごす時間も実際にあります。
最初のうちは手厚くサポートしてくれていても、日を追うごとに関わってくれる先生が少なくなっていき、だんだんと1人になる時間が増えていったという生徒もいます。
ですから、別室登校だから教職員とマンツーマンでしっかりサポートしてもらえるという期待はしない方が良いです。
学校側からすると別室登校は「非常用の措置」となっており、教職員の確保が難しいという事情があります。
保護者としては「子供がせっかく頑張って学校に行ったのだからしっかりサポートして欲しい」と感じることも多々あるかも知れませんが、なかなか希望通りにはいかない面があることは確かです。
別室登校では何をして過ごすの?
その子に合った過ごし方をするのが保健室登校や別室登校。
勉強や読書をして過ごす子もいます。先生と話をしたり、手伝いをしたりして過ごす子も多いようです。
もちろん先生の時間があいていればクラスメイトと同じ内容の授業を個別で受けたり、定期テストも本人が嫌がらなければ受けることができます。
ただ、大半は1人で自習をしている時間になるので、だんだんと子供自身が飽きてしまって、学校に来なくなる場合もあります。
保健室登校・別室登校のメリット
①学校との関わりを持続出来る
完全に不登校になってしまうと、家族以外とコミュニケーションをとるチャンスが無くなってしまいます。
最初のうちは子供も「学校に行かなくて良い」ということで気持ちが休まりますが、欠席日数が増えていくと不安が大きくなったり罪悪感を感じてしまう子供も少なくないです。
そういった場合でも別室登校で数時間でも学校で過ごせば、「自分はずる休みをしているわけではない」「頑張って学校に行けた」と子供自身が安心することができます。
また、担任の先生と直接は話せなくても顔を合わしたり挨拶をするだけでも、全く何も関わらなくなってしまうよりはコミュニケーションを途絶えさせずにすみます。
②生活リズムが整う
登校時間をずらしたり短時間で下校していても、『学校に来ること』は、生活のリズムが大きく崩れるのを防げます。
不登校の子供は生活リズムが不規則になるため身だしなみが疎かになったり、1日中ダラダラしたり、夜更かしして昼夜逆転してしまいがちです。
生活リズムが崩れると精神面にも影響が出て不安定になりやすく、子供にとって悪影響がたくさんあります。
ですから、別室登校でも「学校に行く」という目的があれば、早寝早起きが続けられますし、外にでることで身だしなみに気を使ったり、身体を動かすことで食欲がわいたりとメリットが大きいです。
③出席日数として認められる
小学生は受験をする子が少ないので、出席日数を気にする人はあまりいないでしょう。
でも、中学生は多くの子が受験を控えています。内申書に出欠の記録があるので、出席日数は重要です。
保健室登校、別室登校を出席と認めるかは、校長先生の裁量となっていますが、ほとんどの小中学校で出席と認められます。
不登校でも出席扱いになる|学校に行かずに出席日数を稼ぐ方法まとめ④教室に戻るきっかけがつかみやすい
別室登校で学校に行っていれば、他の児童生徒や先生とのコミュニケーションが取りやすいこともあって、教室復帰へのきっかけがつかみやすくなります。
「運動会の練習だけ出てみない?」「文化祭の準備を手伝って」などの声かけがあると、「ちょっと行ってみようかな」と思う子も多いようです。
本人が教室復帰を望んでいない場合は無理をさせる必要は全くありませんが、もしも「いつかは教室に戻りたいな」と子供自身が思っているなら、少しずつクラスメイトと交流を続けながらスモールステップで教室復帰を目指してみましょう。
⑤一人で留守番をすることを避けられる
親が共働きや一人親の場合、不登校になると子供一人で留守番をすることなります。
心に不安を抱えた子供を残して仕事に行くことは、親にとってもかなり心配なことです。
また、子供本人も平気な顔はしていても心の中が寂しさで一杯のこともあります。
既に傷付いたり苦しんだりしている状態の子供を長い時間1人にすることは、さまざまな面で不安要素が大きいです。
保健室登校、別室登校をしていれば、一人で留守番をする時間が長くなることを避けられます。
保健室登校、別室登校をする時のデメリット
①同級生や先生に会うと不安感が大きくなる
別室登校は不登校に比べて他の児童生徒、先生と接する機会があることもあります。
すると、やはり当事者である子供にとっては負担になることもあります。
「さぼっていると思われているんじゃないか…」特に同級生に対しては、こうした思いを強く持って罪悪感にかられることもあるようです。
親としては、「心を休ませるための大事な時間なんだよ」「急に全力でがんばるのは無理だから、準備期間だよ」と言い聞かせたり、「恥ずかしいことをしているわけではない」と伝えて自信を持たせてあげることが大切です。
また、担任の先生に対して、クラスの子にもそういう話をしてもらえるようお願いしておきましょう。
「不登校や別室登校は悪いことではない」という意識をお互いに持っておく必要があります。
②学習の遅れが気になる
保健室登校、別室登校は、不安を抱えた子供の心のケアを第一としています。
心や体を壊してしまうことは一番避けなくてはなりません。ですから授業に出られない分、学習面での遅れは避けられないでしょう。
たとえば完全に不登校の状態であれば、保護者サポートのもと自宅でみっちり勉強することで学習の遅れを取り戻すことも可能ですが、別室登校であれば1人で勉強する時間が長いので、なかなか学力を強化するのが難しいこともあります。
先生方からは「しっかりサポートします」と力強い言葉をかけてもらえることもあるのですが、実際には子供自身が別室の中でやる気を出せるかという問題もあり、一筋縄にはいかないという現実があるのです。
別室登校・保健室登校で子供の居場所を確保する
保健室登校や別室登校、子供が教室に入ることがつらくなった時こういう場所があると本当に助かりますよね。
さまざまなトラブルで教室に入るのがつらくなった子供がそのまま不登校になるのではなく、教室の外で居場所を確保してあげることで登校を続けられるのは子供にとっても保護者にとってもメリットが大きいといえます。
不登校でも楽しみながら毎日を過ごせている子供もいれば、毎日「どうすれば良いんだろう」と不安を抱えながら苦しい毎日を送っている子供もいます。
学校に行けないなら家にいれば良いと大人が決めるのではなく、本人の気持ちに寄り添いながら最善の方法を探してあげることが大切です。
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